同窓生の活動

本の紹介「この悲しみの意味を知ることができるなら」 作者:入江 杏(いりえあん)

さつき会の友人より、突然お電話頂き、この文章を書かせて頂いています。

私は11期の卒業生ですが、しばらく、さつき会にも同窓会にも出席できずにおりました。

2000年末に起きました世田谷事件を、ご記憶でしょうか?あの事件で亡くなりました4人が私の実の妹一家なのです。当時隣家に住んでいた私は、妹たちの死後、なぜ助けてあげられなかったか、自責の念に苦しみました。事件以来、世田谷の地を踏むことも辛いと感じる日々でした。

昨年末で事件から早くも7年の月日がたってしまいました。なぜ4人が不条理に逝かなくてはならなかったか…自問する中で、グリーフケア(悲嘆からの回復)に取り組むことによって、喪失の意味を考え続けた7年間でした。

その集大成として、なくなった姪と甥の名前に因んだペンネームで「この悲しみの意味を知ることができるなら」入江杏(春秋社)という本を出版しました。この本は、いわゆる事件被害者の手記本の体裁をとっていません。水色の表紙の落ち着いた仔まいの美しい本に仕上げて頂きました。死の物語と生の物語、から成るこの本は、事件の概要を伝えるというよりは、心の再生の軌跡を追った励ましの書となれば、と願って、出版を決意したものです。

喪われた4人の物語を語り直してみると、自分の悲しみや苦しみよりも、4人の生命の物語が、ひたすら鮮やかに私の胸に蘇ってきたからです。生と死の挟間にあって、人は生命を愛することでしか、救われないのだと気づかされたのでした。新たに見えてきた生の物語、生きることの美しさが、この本の主眼です。よろしければ、お手にとってお読み頂ければと思います。

冒頭に書きましたように、この拙文を書くきっかけは、一本の電話でした。電話を頂戴したその日は、七年目の命日だったのです。4人が星になって以来、不思議な思いに打たれることがよくあります。思いがけない出会いが偶然のように訪れる…その日がたまたま、4人にゆかりのあることが多いのです。たくさんの不思議、励まし、喜びに支えられて、私たち家族の今があります。

この本のあとがきに書いたように、「涙より微笑みを選ぼう」と感じられる今に、心から感謝したいと思っています。最後に、事件は未解決です。なんとしてもその解決を、と願ってやみません。たくさんの方々のサポートに心より感謝いたしつつ。

入江 杏(いりえあん)

作者の紹介

とても悲しく、重たい事件に直面されています。残されたご家族のこと等諸事情を考え今回はペンネームでのご紹介にさせていただきました。

「この悲しみの意味を知ることができるなら」は全国の書店で販売されています。直、お問い合せ等は 03―3416―2600(同窓会)までFAXにてご連絡下さい。